Act.5〜A.D.209 夷陵
周…周峻、だっけ?あの子のおかげで、ほんと、助かった。
俺いったい何言ったんだろ。興覇との約束守らなきゃってもう必死だったから、自分でも何言ったかわかんないや。
程公は「子明も成長したな」ってほめてくれたけど、ほんとは何言ったか覚えてませんなんて言ったら、「この阿蒙が!」って怒られるだろな…。
うん。…でも、言われても仕方ない。ほんと、阿蒙だもん、俺。
もっと早く気づくべきだったんだ。興覇に公績の父上が討てた筈ないって。
そういえば公績、だいじょぶかな。…ううん、だいじょぶだ。俺の勘、そう言ってる。
そう…、そういえば公瑾の大将、最初から興覇には冷たかったよな。…謀反人なんて疑いかけてたもんな。
あれ…だよな。大将…、公績に興覇のこと殺させたいって…、そう思ってたってことに…なる、よな。やっぱり…。
信じたく、ないけど…。
でもきっと何か理由があるんだ。うん。何かある。したいしたくないの問題じゃなくて、そうしなきゃならなくなった、理由が。
伯言と出会って。陸家のこととか、色々聞かされて。そして…、今回。殿ではなく、大将を盟主と仰ぎたいという、豪族たちがいることを知って。
鈍い俺にも、やっと判った。大将を担ぎたい連中は、確かにいる。
何か、あれなんだ。きっとそれに関係したことなんだ、興覇のことも。
やっぱ伯言の言うの、そうなのかなあ。周家は公瑾どのに孫家乗っ取らせたがってるって。
でなきゃ…あの子があんなこと、知ってる筈がないよな。こっちには何の報せも来てないんだもの。周家から何か、報せが行ってるんでなきゃ…。
あの子…
いいや。信じよう。だって…そうじゃないか。もしそうだとしたらだよ、あの子、興覇たちを助けるために、自分を危険に晒してくれたってことになるじゃないか。
いい子なんだよ。
だからあの子が裏切るなんて…うん。絶対、そんなことはない。
あ。ちょっと待てよ。
周家がそう思ってるってことは、…もしかして…
そこまで考えた時。目の前が開けて、夷陵の、城壁が見えた。
城壁の上には、まだ、「孫」の赤旗が、翻っている。
興覇は、持ちこたえてくれたのだ。
「全軍、突っ込めーっ!!」
程公の鋭い号令。俺たちは、一気に、敵の背後を衝いた。
よし!大成功!
完全に不意を打ったもんな。算を乱した敵兵なんて、俺たちの敵じゃない。俺たちが、ここまでの戦力投入してくるなんて、予測してなかったんだろうな。
騎馬隊も、部下を纏めると、急ぎ撤退にかかる。そのあたりの呼吸は流石だ。きっとあれ、張遼だな。
戦闘中、俺は何度も、城壁を見上げた。興覇の安否が、気にかかって。
あいつのことだ。無茶をして、張遼に突っかけて、ケガでもしてんじゃないだろうか。そう思って。
仲間のことは大事にするけど、自分のことになると、あいつなあ…。戦だとかケンカだとか言うと、あいつ、変に燃えるからな。
ほら。城門が開いた!
赤い被布を先頭に、城内の兵が、一気に討って出てくる。
ああ。興覇だ。
背中には、自慢の強弓。
あの馬鹿、大人しくしてりゃいいのに。…しょうがないなあ、もう。
ほら、あんなに楽しそうに、刀振り廻して。根っから暴れるのが好きなんだから…。なんか前の殿見てるみたいだな。前の殿もあんなふうに、ほんと楽しそうに敵に突っ込んでったっけ。
「興覇!」
出迎えようと、俺は、馬の向きを変えた。
うわ、敵来たし!剣…、右!よし、手応えあり。うっわ…、血かぶっちゃった。
あ。大将と程公だ。反対側から駆けてくる。
興覇ってば…、あの、赤い被布は、止めたほうがいいんじゃないか?弓の的になっちゃうじゃないか。ほら…、あ、余裕で払った。
…え?
瞬間、何が起こったのか、わからなかった。
興覇が、大将を迎えようと、馬首をそちらに向けた。
俺の後ろで、ひゅっと、音がして…
「伯符っ!」
俺に見えたのは、馬から落ちる大将。背中で聞こえた、断末魔の悲鳴。
反射的に放たれた興覇の矢が、狙い違わず、射手の喉を、射抜いていた…
呉の、兵の喉を。
…大将が、先だ。
悪夢のような光景を振り捨てて、俺は、大将に駆け寄った。
幸い敵の残兵は、殆どいない。程公と、目が合った。頷いて、程公が大きく息を吸い込む。
「ぼやぼやするな!一兵残らず、叩き斬れ!」
頼もしい声に、指揮を委ねて、俺は、大将の側に跪いた。
「鎖骨で、止まってる。これなら…」
ほっとしたように、興覇が言って、そっと、大将を抱き上げた。小さく、大将が呻く。
「城に?」「おう」
援護の構えで、俺が、付き添う。これ以上、どんな矢だって、大将に当ててたまるもんか。
「…馬鹿な人だ。自分から当たりに行くなんて」
「なんだよその言いぐさ!庇って貰った癖に…」
思わず怒鳴った俺を、興覇は、呆れたように見た。
「お前、…でっかい目してどこ見てたんだ?狙われたのは、俺じゃねえぞ」
…え?
「射手が下手だから、俺の方に逸れて来たが…、狙われたのは、俺じゃねえ。この人だ。じっとしてりゃあ避けられたのに…、ったく」
「こ…」
頭の中が、真っ白になる。
「射た奴に聞いてみりゃ判る…って、死んだか?」
俺は黙って、頷いた。興覇の矢をまともに受けて、生きてられる奴が、いるもんか。でも…
「まずったなあ…。考える前に、手が動いちまったからなあ」
答える言葉を、必死に探したけれど。俺の頭は、回転を止めてしまったようで。
そこへ。次の打撃が来た。
「なあ、子明…、この人、どっか悪いのか…?」
「え…」
「軽いぞ」
俺はさぞ、間抜け面で見上げていたのだろう。興覇が、軽く、舌打ちをした。
「軽いってってんだよ。武人の躰とは、思えねえ…」
世界が。粉々になったような気がした。
軍医の前には、俺たち三人。程公と、興覇と…、そして、俺。
「矢傷は、大したことはありません。矢は、うまく鎖骨で止まりましたし…、血の脈を傷つけてもいません。あとは落馬したときの打撲だけですが…」
最初、軍医がそう言った時、俺は安心した。程公のほっとしたような吐息も聞こえた。けど、…それで終わりじゃなかったんだ。
「ただ…」
「ただ?」
言いよどむのを、鸚鵡返しに、繰り返して、
「この人は、どこが悪いんだ?」
興覇が、ずばりと核心に、斬り込んだ。
「軽かったんだよ。抱き上げた時。…武人の躰とは思えねえ程。どっか悪いんだ、この人は…。そうだろ?」
促されて、軍医は、唇を噛んで、頷いた。
「胃の腑に…、何か、固い痼りがあります」
咄嗟に、意味が取れなかった。はっと息を呑んだのは、程公か。
「それは…」
「何故、これほどになるまで放っておかれたのか。かなり痛みがあった筈なのに…」
重い沈黙。
血の気が引いた程公の顔を。険悪な興覇の顔を。そして、暗く眉を顰めた軍医の顔を。俺は、代わる代わる、見つめた。
「…どういう、ことなんです?俺に…、俺にわかるように、言ってくれませんか?」
「公瑾殿は、病なんだよ、子明」
興覇の声は、酷く、静かで。
「躰の中に悪いもんが出来ちまう…そういう病があるんだよ…」
悪いもんて?軍医どのが言ってた、固い痼りっていうのが、それなのか?
「それはな…、その躰の持ち主の命を糧にして、どんどん育って行くんだ。そして、しまいに、持ち主を食い尽くしちまうんだよ…」
「…あ…?」
声が、出なくなった。俺の大将が…、公瑾殿が…?
「手だては、ないのか?」
程公のただでさえ鋭い声が、悲痛な響きを帯びて、空間を切り裂いた。
見開いた俺の目の前で。軍医の首が、ゆっくり、左右に振れる。
「嘘だ…っ!!」
掠れた悲鳴が、自分の声だとは、最初、判らなかった。
「大将は、あんなに綺麗で、強くて…、いつも先頭に立って…」
いつか、頬が、濡れていた。
「嫌だ!そんなの、嫌だっ!俺は信じない、俺は…」
「子明!」
腹に響く声が、俺を黙らせる。
気がつけば、きつく腕を掴まれていて。興覇が、厳しい顔で、俺を睨んでいた。
「落ち着け!お前が動揺してどうする!お前は…」
振り切って、飛び出した。顔中が、涙になった。
子供みたいだけど…でも、どうしようもなくて。だって…、だって…
俺の大将が、死ぬなんて…!!
「落ち着いたか」
城壁の上。
やっと見つけたおおきな瞳は、まだ、ぐずぐずとやっていた。
「ったくもう…、お前、ガキかよ。一軍預かる将のすることじゃねえだろ?」
口調はからかうようだったが、甘寧の声は、どこか優しい。
「ごめん…」
「ま、無理もねえか。お前はずっと、一緒にやってたんだからな」
肩を竦めて、甘寧が笑った。
「お前がぴいぴい泣いてる間に、次の手、決まったぜ」
こちらに救援に来た全軍は、明日早々に、公瑾殿を守って引き返す。夷陵はこのまま、俺が守る…
「なに、抜かしゃしねえさ。あいつらも今回で懲りたろっしな」
そして…、呂蒙の目を見ずに、甘寧は言った。
「なあ、子明…」
「んー?」
ぐすん。また、鼻を啜る音。
「伯符ってなあ…、ここの先代の字(あざな)だよな?」
「うん」
そう。あの時…甘寧を庇った時。周瑜は確かに呼んだ。「伯符っ!」と。
「俺…、似てんのか、そいつと?」
「似てるって…いうか…」
もう一度鼻を啜りあげて、呂蒙が拳で目を拭った。
「暴れてると…似てるかも。前の殿もあんなふうだった。ほんっと楽しそうに、敵に突っ込んでった」
「ふうん」
おもしろくなさそうに甘寧が答え、…そうしてそれなり、黙り込んだ。
「・・・・・ああ」
真っ赤になったおおきな瞳が、甘寧を見上げる。
「面白く…ないよな、そりゃ。お前…手柄立てて認めてもらおうってあんな頑張ったのに…、他の人の名前で呼ばれたんじゃ…」
「んなこたあいいんだ。俺の功績は、ンなことくらいじゃ消せねえ。だろ?」
お前からも殿に売り込んでくれよなと、にっと笑って。
「いやな…、お前には黙ってるつもりだったんだが…、程公がな…」
「程公が、なに?」
「あれでよ。ほれ、俺のこと伯符って呼んだんでよ。公瑾殿のこと、誤解してたって…言い出してよ…」
瞳は甘寧を見上げている。まだ赤くなったままだったけれど、それでも澄んだ光を湛えて。
「あん人よ…、ずっと公瑾殿のこと、疑ってたんだと」
「疑う…って?」
「公瑾殿、…その孫伯符とやらが死んだ時、葬式の為に荊州から全軍連れて引き返したんだってな」
「…うん」
「出来る筈ねえってんだよ。普通。劉表とそこで対峙してたってのに、いきなり全軍で退いちまうなんて…、そんな物騒なこと、出来るわけねえって。そらまそうだよな」
「……うん」
「だからよ。周家と劉表との間で、話、ついてたんじゃねえかって。孫伯符殺して、こっちがガタガタしてる間に、大軍率いて取って返して、そのまま公瑾殿が揚州を…って」
「・・・・・。」
ついと。瞳は逸れた。
言いにくい言葉を甘寧は、必死になって押し出した。
「つまり…周公瑾が…つか周家が、孫伯符殺させたんじゃねえかって…。ああ、今は誤解だって判ったってってたぜ?けど…他にもそう思ってる奴がこっちにいて、それで、仇討ちのつもりで公瑾殿狙ったんじゃねえかって…」
「・・・・・。」
「だとしたら、一度で終わるとは限らねえ。二度目があるかもしれねえだろ?そのつもりで、こっちも心づもりを…」
言葉は、途中で途切れた。
予想していた反応は、「大将がそんなことするはずないだろっ!」と、泣きながら喰ってかかってくるというものだったのに。
呂蒙はじっと黙り込んで、じっと夜空を見つめているだけで…。
「子明…、聞いてんのか?」
おおきな瞳に。
ゆっくりと、透き通ったものが盛り上がり。月の光にきらめきながら、日に焼けた頬を滑って落ちた。
「それ、…合ってると思う」
「子明…?」
そうして呂蒙ははっきりと言った。
「合ってるよ。前の殿が死んだの、大将のせいだよ。周家が…焚きつけたんだ。前の殿のこと…恨んでたヤツ。大将に孫家乗っ取らせるために」
きらきらと。
涙が流れる。
「そだよ。…大将のせいなんだ」
大将が…大将がそこにいたから、前の殿はあんなふうに殺された
俺のとってもだいじなひとのせいで、俺のとってもだいじなひとが…!
かけるべき言葉が。かけられる言葉が。その時そこにあっただろうか。
「そうだよ、葬式に全軍なんて要らないもん!ひめさま、ずっと気づいてたんだ。気づいてたから俺に、何があっても殿見捨てないでくれって…、大将の方につかないでくれって、釘刺したんだ」
周家は孫家を潰したがってる。伯言はそう思ってる。ひめさまもそう思ってる。
伯言はすごく頭がいい。ひめさまだって、そうだ。どっちかひとりならあるかもしれないけど、ふたりとも間違うなんて、そんな筈、ない。
「今だって周家は動いてる。…殿から揚州奪おうって動いてるんだ。でも…止めたい人もいるだろから…、きっとそっちだよ、大将狙ったの」
仇討ちなんて…、そんなんじゃない。あれからもう、10年経ってる。
「10年仇討ち待ったんならこの戦終わるまでくらい待てるだろ?」
「子明…、お前…知って…」
「知ってたっていうか…」
ずっとおかしいって思ってた。何かヘンだって思ってた。
俺がヘンだと思ってて、でも、ずっとつかまえられなかったこと…、そのふたつめが、これなんだ。
でも俺のどっかにそのことがひっかかってて…、だから俺、伯言が周家の話したとき、言えなかったんだ。
大将が殿殺す筈なんてない、っては。
うん。俺…なんとなく…思ってたんだと思う。前の殿が殺されたことと大将と、何か関わりがあるんじゃないかって。
でも、程公みたいにはっきり言葉にすることは、俺にはこれまでできなかった。そやって聞かされてやっと、…ああそうだって思ったんだ。
なんでできなかったのも、今は判る。
大将自身が前の殿を殺したがる筈はないって、…誰よりも俺が、知ってるからだ。
俺、大将の気持ちばっか見てたから…、だから、何かヘンだとは思ったけど、…それ以上ちゃんとは判らなかったんだ。
そうだ。大将は心底そう思ってた。…今だって思ってる。やり直せるものなら今度こそって、絶対、絶対、思ってる。だから今日興覇のこと庇ったんだよ。
でも、さ。…周家が思うことと大将が思うこと、おんなじだとは限らないじゃないか。
大将がうんって言う前に周家が勝手にはじめちゃったら?
「たぶん…、そうだったんだと、思う…。周家がはじめちゃったから…、大将、乗るしかなくなったんだと、思う」
「…そ…っか…」
「殿も、そう…思ってるんじゃないかな。だから大将のこと追い出したりしなかったんだ。ひめさまだって判ってる筈だよ?だって…、前の殿と大将…、ほんとにほんとに、仲良くて・・・・・」
確かに。それなら全て、辻褄が合うが…。
「今はどうなんだ?」
甘寧が鋭く斬り込んだ。
「今?」
「今は公瑾殿どういうつもりなんだ?周家の意向に乗りっぱなしなのか、それとも…」
呂蒙がぎゅっと、唇を噛んだ。
そう。問うまでもない。判っている。
でなければなぜ甘寧を邪魔にする?でなければなぜ敵対する者が彼を狙う?
きらきら。きらきら。
涙が、流れる。
「泣くなよっ!」
たまりかねたように、甘寧が喚いた。
「なんでそんなヤツのために泣いてやらなきゃならねえんだよ!」
呂蒙が、きっと睨み返した。
「だって俺大将好きだもん!」
「バカか!」
頭ごなしに、甘寧が怒鳴る。
「お前の前の主人、殺したヤツだぞ?」
「殺したと死なせたとじゃずいぶん違うよっ!もし、…殺したんでも、構わないよっ!」
「構わないって…」
呆れたように、目を瞠って。
「お前前の主人の側仕えだったんだろ?だいじなひとだったって、言っただろうが!」
「そうだよ!」
「それからお前、俺のことは!俺はどうでもいいのかよ!公績は!」
間違った情報に踊らされ、仇討ちだ何だと振り回された俺たちは。
「でも…、だって、好きなものは好きなんだから…、そんなのどうしようもないだろうっ!」
それでもやはり、呂蒙は言った。顔中を涙にして、怒鳴るように言った。
「前の殿も好きだし、興覇も好きだし、公績も好きだし、ひめさまも好きだよ!けど、でも…、それでも俺やっぱり公瑾どの好きなんだよっ!!」
裏切ったとしても、殺し合ったとしても、陰謀を巡らしてるとしても、それでも、それでも。
「俺、みんな、好きなんだよ!みんな、みんな、大事なんだよっ!!」
きらきら。きらきら。流れる涙。
月を映して、止め処なく。
「バカ野郎…」
呆れ果てたように、甘寧が言った。
「バカでいい!」
拗ねたような声で、呂蒙が答えた。
「阿蒙」
「阿蒙でいいっ!」
「わーった」
何かに怒っているように、甘寧がぷいと背を向けた。
「もう、いいから。公瑾殿んとこ行ってやれ。でもって、あの胸クソ悪い奴さっさと連れてって、早いとこ江陵陥としちまえ」
「興覇」
瞬間。おおきな瞳を、懸念の色が掠めたが。
「んだよ。城ほっぽってどっか行っちまうとでも思ったか?」
くっと、ひとつ。喉で笑って、振り向いて。
「心配要らねえよ。お前みたいなバカ、放ったらかしに出来っかよ」
「バカって…」
「あー?バカでよかったんじゃねえのか?」
子供のようにむくれた頬に、きらきら残った、涙の跡。
「ああ。きっちり守ってやらあ。けどな…孫家の為にじゃねえ。揚州とやらの為にでもねえ」
呂、子明っていう、馬鹿の為にな。
おおきな瞳が、輝いた。
「安心して行ってこい」
うんと、頷いて。
「ありがとな…、興覇」
ぱたぱた駆け去る、軽い足音・・・・・
ほんとにバカだと、甘寧は思った。
バカでバカでバカでバカで…、いじらしいくらい、バカだと。
俺、みんな、好きなんだよ。
みんな、みんな、大事なんだよ。
たとえ、月が地に墜ちても。